*唐十郎作 金守珍演出 公式サイトはこちら 芝居砦満天星 5月7日まで(1,2)
創立30周年第1弾として、2006年に唐十郎が書き下ろした「われわれにとっては宝物のような作品」(開演前の金守珍の挨拶)である『風のほこり』と『紙芝居』が連続上演された。梁山泊の本拠地、というより「根城」と言った方がふさわしい芝居砦満天星は大入り満員の盛況である。いずれも唐十郎が実母をモデルに、梁山泊の看板女優である渡会久美子に当てて書き下ろした。
『紙芝居』は敗戦後の下谷を舞台に、紙芝居屋を手伝う女・艶(わたらい)と復員兵・牧村(広島光)の出会い、「おおかみ王女」物語のなかで、無くなった1枚の絵と土地の買収や利権争いが絡む1時間の物語だ。
『風のほこり』は昭和5年、浅草の芝居小屋の奈落の文芸部屋で台本書きに難儀している水守(広島)と、作家を夢見て脚本の持ち込みをしている義眼を持つ女・加代(渡会)を軸に、舞台上と劇場外の世界が交錯する2時間の物語である。
劇団員はもちろんのこと、『紙芝居』の百池先生役に黒テントの根本和史、『風のほこり』の義眼の細工師湖斑(こむら)役に東京ヴォードヴィルショーの石井愃一など、迫力と貫禄を備えた客演陣が舞台を支え、牽引する。
『紙芝居』→『風のほこり』の順に観劇したが、前者は劇のリズムにうまく乗れず、これは故意なのかアクシデントなのか、俳優が小道具を扱うのにやや手間取っているように見えたり、舞台に誰もいない時間が(ほんの少しの時間なのだが)長く感じられ、それまでの熱が失われたりなど、集中を欠く観劇となった。一方で『風のほこり』は惜しげもなく大量の水を使う演出や、石井愃一の濃厚な演技が相まって、舞台空間や物語の運びにもにメリハリが生まれ、客席の空気も熱く盛り上がった。
カーテンコールで劇団の主宰である金守珍から、今後の梁山泊のラインナップが発表された。大鶴義丹を迎えた『腰巻おぼろ 妖鯨編』、さらに大鶴美仁音を迎えた『少女都市からの呼び声』(であったと記憶する)が上演予定とのこと。挨拶のなかで金は「継承」という言葉を使った。状況劇場で培ったアングラ演劇の思想と方式を継承し、発展させたいという強い意志の表れである。
伝統芸能でも新劇でもない、アングラ演劇の継承と発展。ここ数年でようやく唐組の舞台に足を運び始めた自分にはなかなか実感を抱きにくく、実は若干の違和感もあるのだが、これだけ情熱にあふれた舞台を見ると、客席に身を置く者とても「うかうかしていられないのでは?」という危機感と、「これからどんな舞台を体験できるのだろう」という夢と期待に、早くも胸が高鳴るのであった。